売掛金買取の通知型と非通知型の違いとは?メリット・デメリット比較

「また資金繰りか…」。
月末が近づくたび、頭を悩ませる経営者の方は少なくないでしょう。
特に我々のような中小製造業や、創業して間もない事業者にとって、キャッシュフローの安定は死活問題です。

こんにちは、石黒誠二です。
かつて自動車部品メーカーで営業技術として15年、価格交渉や納期管理に奔走し、現在はビジネスとお金のリアルを伝える執筆活動をしています。
「現場でお金がどう動いているか」を重視する私から見て、売掛金買取、いわゆるファクタリングは、時に強力な資金調達手段となり得ます。

しかし、このファクタリングには「通知型」と「非通知型」という二つの主要な方式があり、どちらを選ぶかによって実務上の影響は大きく異なります。
安易な選択は、大切な取引先との関係にヒビを入れることにもなりかねません。

この記事では、「資金繰りの現場」を知る私の視点から、通知型と非通知型の違い、それぞれのメリット・デメリット、そして自社に合った選び方のポイントを、具体例を交えながら解説していきます。
「いざという時のために知っておきたい」という方も、「今まさに困っている」という方も、ぜひ最後までお付き合いください。

売掛金買取の基本

まず、ファクタリングを理解する上で欠かせない「売掛金」と、その買取の仕組みについて、基本を押さえておきましょう。
「そんなことは知っているよ」という方も、改めて確認することで、より深くファクタリングを理解できるはずです。

売掛金とは?なぜ資金繰りに影響するのか

売掛金とは、簡単に言えば「ツケ」のことです。
商品やサービスを販売した際に、その場で現金を受け取るのではなく、後日代金を受け取る権利を指します。
多くの企業間取引では、この掛取引が一般的です。

例えば、あなたが部品メーカーの社長だとしましょう。
大手企業に部品を納品し、請求書を発行します。
しかし、その代金が実際に入金されるのは、1ヶ月後、あるいは2ヶ月後といったケースが多いのではないでしょうか。

この「入金待ち」の状態の金額が売掛金です。
売上は立っているのに、手元にお金がない。
このタイムラグが、資金繰りを圧迫する大きな要因となるのです。

特に、支払いサイト(請求から入金までの期間)が長い取引先が多かったり、急な大口受注で仕入れ資金が先に必要になったりすると、途端にキャッシュフローは厳しくなります。
黒字倒産という言葉があるように、利益が出ていても現金が回らなければ、会社は立ち行かなくなるのです。

売掛金買取(ファクタリング)の仕組み

そこで登場するのが、売掛金買取(ファクタリング)です。
これは、企業が保有する売掛金を、ファクタリング会社が手数料を差し引いて買い取る金融サービスを指します。

ファクタリングの基本的な流れ

  1. 商品・サービスの提供: あなたの会社が取引先に商品やサービスを提供し、売掛金が発生します。
  2. ファクタリング申込: あなたの会社がファクタリング会社に売掛金の買取を申し込みます。
  3. 審査: ファクタリング会社が、あなたの会社や取引先(売掛先)の信用情報、売掛金の存在などを審査します。
  4. 契約・入金: 審査に通れば契約締結となり、ファクタリング会社から手数料を差し引いた代金があなたの会社に入金されます。
  5. 売掛金の回収: 期日になったら、ファクタリング会社が売掛先から売掛金を回収します(通知型の場合)。非通知型の場合は、一旦あなたの会社に売掛金が入金され、その後ファクタリング会社へ支払います。

この仕組みにより、企業は売掛金の入金日を待たずに、早期に資金化できるわけです。
いわば、将来入ってくるお金を前倒しで手に入れるイメージですね。

中小企業がファクタリングを利用する主なケース

では、どのような場合に中小企業はファクタリングを利用するのでしょうか。
私の経験や見聞きした範囲では、以下のようなケースが多いように感じます。

  • 急な資金需要への対応:
    • 予期せぬ大口の受注があり、急いで原材料を仕入れる必要がある。
    • 機械の故障など、突発的な設備投資が必要になった。
  • 銀行融資が難しい場合の代替手段:
    • 赤字決算や税金の滞納があり、銀行からの追加融資が見込めない。
    • 創業して間もなく、実績が乏しいため融資のハードルが高い。
    • 担保となる不動産がない。
  • 支払いサイトのズレによる資金不足:
    • 主要取引先の支払いサイトが長く、運転資金が不足しがち。
    • 売掛金の回収が遅延している。
  • つなぎ資金の確保:
    • 次の融資実行までの期間や、大型案件の入金までの間の資金繰りを繋ぎたい。

経済産業省も、中小企業の資金調達手段の一つとしてファクタリングの活用を促しています。
決して怪しい金融サービスではなく、正しく理解し活用すれば、経営の助けとなるものです。

通知型と非通知型の違い

さて、ここからが本題です。
ファクタリングには、大きく分けて「通知型」と「非通知型」の2つの方式があります。
この違いを理解することが、ファクタリングを賢く利用するための第一歩と言えるでしょう。

通知型:取引先に通知される買取方式

通知型ファクタリングは、その名の通り、あなたの会社がファクタリングを利用して売掛金を譲渡したことを、取引先(売掛金の支払い元である会社、以下「売掛先」と呼びます)に通知する方式です。
一般的には「3社間ファクタリング」とも呼ばれます。

この方式では、ファクタリング会社、あなたの会社、そして売掛先の3社が関与します。
具体的には、ファクタリング会社から売掛先に対して「債権譲渡通知」が送られ、売掛金の支払いをファクタリング会社に直接行ってもらうよう依頼するのが一般的です。

通知型ファクタリングのイメージ

sequenceDiagram
    participant あなたの会社
    participant ファクタリング会社
    participant 売掛先

    あなたの会社->>ファクタリング会社: 売掛金買取申込
    ファクタリング会社->>あなたの会社: 審査・契約
    ファクタリング会社->>売掛先: 債権譲渡通知・承諾依頼
    売掛先-->>ファクタリング会社: 承諾
    ファクタリング会社->>あなたの会社: 買取代金支払
    売掛先->>ファクタリング会社: 売掛金支払 (期日)

この図のように、売掛先がファクタリングの取引に直接関与するのが特徴です。

非通知型:取引先に知られない買取方式

一方、非通知型ファクタリングは、ファクタリングの利用を売掛先に一切知らせずに行う方式です。
こちらは「2社間ファクタリング」とも呼ばれます。

この方式では、あなたの会社とファクタリング会社の2社間のみで契約が完結します。
売掛先は、あなたの会社がファクタリングを利用していることを知りません。
そのため、売掛金の回収は、期日に通常通りあなたの会社に振り込まれ、その後、あなたの会社からファクタリング会社へその資金を支払う、という流れになります。

非通知型ファクタリングのイメージ

sequenceDiagram
    participant あなたの会社
    participant ファクタリング会社
    participant 売掛先

    あなたの会社->>ファクタリング会社: 売掛金買取申込
    ファクタリング会社->>あなたの会社: 審査・契約・買取代金支払
    売掛先->>あなたの会社: 売掛金支払 (期日)
    あなたの会社->>ファクタリング会社: 買取代金支払

売掛先は取引の存在を知らないため、従来の商流を変えることなく資金調達が可能です。

通知方法や手続きの実態比較

では、具体的に通知方法や手続きはどのように異なるのでしょうか。
表で比較してみましょう。

項目通知型(3社間)非通知型(2社間)
売掛先への通知あり(ファクタリング会社から債権譲渡通知)なし
売掛先の承諾原則として必要原則として不要
契約当事者利用者、ファクタリング会社、売掛先の3社利用者、ファクタリング会社の2社
入金までの期間やや時間がかかる傾向(数日~2週間程度が目安)比較的早い(最短即日~数日程度が目安)
手数料相場低め(例:1%~9%程度)高め(例:8%~20%程度、オンライン型はこれより低い場合も)
審査のポイント主に売掛先の信用力主に利用者の信用力、売掛金の存在確認の確実性

このように、売掛先への通知の有無が、手続きの煩雑さ、スピード、そしてコストに大きく影響してくるのです。
通知型は売掛先の協力が得られるため、ファクタリング会社のリスクが低減し、手数料が安くなる傾向があります。
一方、非通知型は売掛先に知られずに済みますが、ファクタリング会社のリスクが高まるため、審査が厳しくなり、手数料も高くなるのが一般的です。

通知型のメリット・デメリット

「取引先に通知する」という点が大きな特徴である通知型ファクタリング。
そのメリットとデメリットを、もう少し掘り下げて見ていきましょう。
特に、我々のような地方の製造業にとっては、取引先との関係性が非常に重要ですから、慎重な判断が求められます。

メリット:信用補完、コストの低さ

通知型ファクタリングの最大のメリットは、やはり手数料の低さです。
ファクタリング会社からすれば、売掛金の支払い元である売掛先から直接支払いを受けられるため、回収リスクが大幅に低減します。
このリスクの低さが、手数料率に反映されるわけです。

もう一つの大きなメリットは、信用補完効果です。
あなたの会社の業績が芳しくなかったり、設立間もなかったりして信用力が低い場合でも、売掛先の信用力が高ければ、ファクタリングを利用できる可能性が高まります。
例えば、相手が誰もが知る大手企業であれば、ファクタリング会社も安心して債権を買い取ることができるでしょう。

通知型の主なメリット

  • 手数料が安い: ファクタリング会社のリスクが低いため。
  • 審査に通りやすい: 売掛先の信用力が重視されるため、自社の状況が悪くても利用しやすい。
  • 償還請求権なし(ノンリコース)が基本: 万が一売掛先が倒産しても、利用者が返済義務を負わない契約が一般的。

これらのメリットは、資金繰りに悩む企業にとって非常に魅力的です。

デメリット:取引先との関係に与える影響

しかし、通知型には看過できないデメリットが存在します。
それは、取引先との関係に影響を与える可能性があることです。

ファクタリングを利用するということは、裏を返せば「資金繰りに困っている」という印象を取引先に与えかねません。
「あの会社、大丈夫なのだろうか?」
「もしかして、経営が傾いているのでは?」
といった憶測を呼ぶリスクがあるのです。

長年培ってきた信頼関係も、些細な疑念から崩れることがあります。
特に、地方では企業間のネットワークが密接な場合も多く、一度ネガティブな評判が立つと、回復が難しいケースも考えられます。

「ファクタリングの利用を通知した途端、取引先から与信調査が入ったという話も聞きます。もちろん、全てのケースではありませんが、そうしたリスクは常に頭に入れておくべきでしょう。」(筆者の経験より)

また、債権譲渡の手続きに売掛先の協力が必要となるため、手間をかけさせてしまうことに対する心理的な負担も考慮しなければなりません。

地方製造業での事例と教訓

私の地元、東海地方の製造業の経営者仲間からも、通知型ファクタリングに関する話を聞くことがあります。

ある精密部品メーカーのA社は、大手からの受注が増加し、運転資金が急遽必要になりました。
銀行融資も検討しましたが時間がかかりそうだったため、手数料の低い通知型ファクタリングの利用を検討しました。
幸い、主要取引先とは長年の付き合いがあり、社長同士の信頼関係も厚かったため、事前に正直に事情を説明し、理解を得ることができたそうです。
結果として、スムーズに資金調達ができ、受注に対応できたとのこと。

しかし、別の金型メーカーB社は、そこまで関係性が深くない取引先の売掛金で通知型を利用しようとしたところ、取引先から「なぜ事前に相談がなかったのか」「今後の取引を考えさせてほしい」と厳しい反応があったそうです。
結局、その取引先との関係は悪化してしまったと聞きます。

これらの事例から得られる教訓は、通知型ファクタリングを利用する際には、取引先との関係性の見極めと、事前の丁寧なコミュニケーションが何よりも重要だということです。
手数料の安さだけに飛びつくのではなく、総合的な判断が求められます。

非通知型のメリット・デメリット

次に、取引先に知られることなく資金調達が可能な非通知型ファクタリングについて見ていきましょう。
この方式は、特に取引先との関係を維持したいと考える経営者にとって、魅力的な選択肢に映るかもしれません。

メリット:取引先との関係維持

非通知型ファクタリングの最大のメリットは、何と言っても取引先との関係を維持できる点です。
ファクタリングの利用を売掛先に知られることがないため、余計な憶測や信用不安を招く心配がありません。
これまで通りの商取引を継続しながら、必要な資金を調達できるのは大きな利点です。

また、一般的に資金調達までのスピードが速いこともメリットとして挙げられます。
売掛先の承諾を得る手続きが不要なため、申し込みから入金までの時間が短縮される傾向にあります。
急ぎで資金が必要な場合には、非常に頼りになるでしょう。

非通知型の主なメリット

  • 取引先に知られない: 信用不安を招くリスクがない。
  • 資金調達がスピーディー: 売掛先の承諾が不要なため。
  • 手続きが比較的簡便: 2社間での契約で完結する。

これらのメリットは、特に企業のブランドイメージや取引先との長期的な関係を重視する経営者にとって、大きな安心材料となります。

デメリット:審査の厳しさと手数料の高さ

一方で、非通知型ファクタリングにはデメリットも存在します。
最も大きなものは、手数料が通知型に比べて高くなる傾向があることです。

ファクタリング会社から見れば、売掛金の存在確認や回収リスクが通知型よりも高まります。
例えば、利用者がファクタリング会社に知らせずに、同じ売掛金を別のファクタリング会社にも売却する(二重譲渡)といった不正のリスクも考慮しなければなりません。
これらのリスクをカバーするために、手数料が高めに設定されるのです。

また、審査が比較的厳しくなる傾向もあります。
ファクタリング会社は、利用者の事業実態や財務状況、そして売掛金の確実性をより慎重に審査します。
場合によっては、売掛債権の存在を証明するために、契約書や納品書、請求書だけでなく、取引先とのやり取りの履歴(メールなど)の提出を求められることもあります。

さらに、ファクタリング会社によっては、債権譲渡登記を求められることがあります。
これは、売掛債権が法的にファクタリング会社に譲渡されたことを公示する手続きで、費用や手間がかかる場合があります。

起業初期や成長企業での利用例

非通知型ファクタリングは、どのような企業に利用されることが多いのでしょうか。

例えば、起業して間もないスタートアップ企業です。
設立初期は実績が乏しく、銀行からの融資も受けにくい状況が多いでしょう。
しかし、有望な取引先との契約があり、売掛金が発生しているのであれば、非通知型ファクタリングで当面の運転資金を確保するという選択肢があります。
この場合、取引先に資金調達の事実を知られずに済むため、事業の立ち上げに集中できます。

また、急成長中の企業にとっても有効な場合があります。
売上が急拡大しているものの、それに伴って仕入れ資金や人件費も増加し、一時的にキャッシュフローが厳しくなるケースです。
このような成長局面で、迅速に資金を調達し、ビジネスチャンスを逃さないために非通知型ファクタリングが活用されることがあります。

ただし、いずれのケースも、手数料の高さを十分に考慮し、あくまで短期的なつなぎ資金として利用するなど、計画的な活用が不可欠です。
安易に頼りすぎると、高いコストが経営を圧迫しかねないことを肝に銘じておく必要があります。

どちらを選ぶべきか?判断のポイント

通知型と非通知型、それぞれの特徴が見えてきたところで、次に「では、自社はどちらを選ぶべきなのか?」という疑問にお答えしていきましょう。
これは非常に重要な判断であり、いくつかのポイントを総合的に考慮する必要があります。

事業フェーズごとの適性(創業期/成長期/安定期)

まず、あなたの会社が現在どの事業フェーズにあるかによって、適したファクタリングの方式は変わってきます。

  • 創業期:
    • 特徴: 信用力が低く、実績も乏しい。銀行融資のハードルが高い。
    • 適した方式(傾向): 非通知型。取引先に知られずに資金調達できるメリットが大きい。ただし、手数料の高さを念頭に、必要最低限の利用に留めるべき。
  • 成長期:
    • 特徴: 売上は伸びているが、運転資金需要も旺盛。資金調達のスピードが求められる。
    • 適した方式(傾向): 非通知型で迅速に資金を確保しつつ、事業拡大を目指す。徐々に信用力が高まれば、コストの低い通知型や他の資金調達手段への移行も視野に入れる。
  • 安定期:
    • 特徴: 事業基盤が安定し、一定の信用力がある。突発的な資金需要に対応する必要がある場合も。
    • 適した方式(傾向): 取引先との関係性、コスト、緊急度を総合的に判断。信頼関係の厚い取引先であれば通知型も有力な選択肢。銀行融資など、より低コストな手段も比較検討する。

もちろん、これはあくまで一般的な傾向です。
自社の状況を客観的に分析することが大切です。

取引先との関係性と信用力

次に重要なのが、売掛先である取引先との関係性と、自社および取引先の信用力です。

取引先との関係性

  • 強固な信頼関係がある場合: 通知型ファクタリングの利用について、事前に正直に相談し、理解を得られる可能性があります。この場合、手数料の低い通知型は魅力的な選択肢です。
  • 関係性が希薄、または慎重な対応が必要な場合: 非通知型を選び、取引先に知られずに資金調達する方が無難でしょう。

信用力

  • 自社の信用力が低いが、売掛先の信用力が高い場合: 通知型であれば、売掛先の信用力を背景にファクタリングを利用できる可能性があります。
  • 自社の信用力がある程度高い場合: 非通知型の審査も比較的通りやすくなり、手数料交渉の余地も出てくるかもしれません。
  • 売掛先の信用力に不安がある場合: ファクタリング会社によっては、買取を断られたり、手数料が非常に高くなったりすることがあります。この点は、通知型・非通知型共通の注意点です。

「この取引先になら話せるか」「この売掛金ならファクタリング会社も評価してくれるか」といった視点で検討しましょう。

地元の金融機関・商工会に聞いた「失敗しない選び方」

私自身、地元の起業支援センターで学んだ経験や、付き合いのある金融機関、商工会の方々から話を聞く機会があります。
彼らが口を揃えて言うのは、「ファクタリングはあくまで選択肢の一つであり、慎重な判断が必要」ということです。

専門家からのアドバイスポイント

  1. まずは他の資金調達手段を検討する:
    • 公的な融資制度(日本政策金融公庫など)
    • 地方自治体の制度融資
    • 取引銀行からの借入
      これらの手段の方が、一般的に金利や手数料が低い傾向にあります。
  2. 複数のファクタリング会社を比較する:
    • 手数料率だけでなく、契約内容全体(契約期間、解約条件、償還請求権の有無、債権譲渡登記の要否など)を細かく確認しましょう。
    • 見積もりは必ず複数の会社から取り、条件を比較検討することが重要です。
  3. 悪質な業者に注意する:
    • 残念ながら、法外な手数料を請求したり、不透明な契約を結ばせようとしたりする悪質な業者も存在します。
    • 会社の信頼性(実績、評判、登録の有無など)をしっかり確認しましょう。
  4. 契約書の内容を十分に理解する:
    • 不明な点や疑問点は、契約前に必ず担当者に確認し、納得できるまで説明を求めましょう。安易なサインは禁物です。
  5. 取引先への影響を最優先に考える:
    • 特に通知型を利用する場合は、取引先との関係悪化リスクを十分に考慮し、慎重なコミュニケーションを心がけるべきです。

「緊急だから」「他にあてがないから」と焦って契約してしまうと、後で後悔することになりかねません。
冷静な判断が何よりも大切です。

現場目線からの提言

ここまで、通知型と非通知型の違いや選び方のポイントについて解説してきました。
最後に、私自身の経験や、これまで多くの「資金に困ったことがある人」たちと接してきた中で感じていることを、現場目線からの提言としてお伝えしたいと思います。

「緊急避難」か「戦略的活用」かを見極める

ファクタリングを利用する際に、まず自問していただきたいのは、その目的です。
それは、「緊急避難」的な利用なのか、それとも「戦略的活用」なのか。

緊急避難としてのファクタリング

予期せぬ売上の減少、急な支払い増などで、一時的に資金ショートの危機に瀕している場合。
この場合は、まさに「命綱」としてファクタリングが機能することがあります。
多少コストが高くても、倒産を回避できるなら利用価値はあるでしょう。

戦略的活用としてのファクタリング

例えば、大きなビジネスチャンスがあり、そのための先行投資(仕入れ、設備投資、人材採用など)が必要な場合。
銀行融資では間に合わない、あるいはリスクを取ってでもスピーディーに資金を確保し、事業を成長させたいという明確な意図があるなら、これも一つの「戦略」と言えます。

この目的意識を明確にすることで、ファクタリングの利用が本当に適切なのか、そしてどの程度のコストまで許容できるのかが見えてくるはずです。

本当に使うべき場面とは?

では、具体的にどのような場面でファクタリングは「本当に使うべき」と言えるのでしょうか。
私見も入りますが、以下のような状況が考えられます。

  • 銀行融資の審査に時間がかかり、資金調達が間に合わない場合:
    特に、受注が確定しており、そのための運転資金が短期的に必要なケース。
  • 赤字決算や税金滞納などで、一時的に銀行融資が難しい状況にある場合:
    ただし、根本的な経営改善とセットで考える必要があります。
  • 売掛先の信用力は高いが、自社の信用力がまだ低い創業期・成長期:
    売掛金を活用して、事業を軌道に乗せるための「ジャンプ台」として。
  • 季節的な資金需要の変動が大きい業種:
    繁忙期前の仕入れ資金など、短期的な資金ニーズに対応するため。
  • 売掛先の倒産リスクをヘッジしたい場合(ノンリコース契約):
    特定の売掛先への依存度が高い場合など。

重要なのは、ファクタリングが「魔法の杖」ではないと理解することです。
あくまで、資金繰りの一つの手段であり、メリットとデメリットを天秤にかけ、冷静に判断する必要があります。

「資金に困ったことがある人」だからこそ知っておくべき視点

私自身、会社員時代に同僚の起業を支援した経験や、現在の執筆活動を通じて、多くの中小企業経営者や個人事業主の方々とお会いしてきました。
皆さん、程度の差こそあれ、「資金繰りの苦労」を経験されています。

だからこそ、お伝えしたい視点があります。

1. 手数料は「将来の利益の前借り」と心得るべし。
ファクタリングの手数料は、決して安くはありません。
そのコストは、将来得られるはずだった利益の一部を支払っているのと同じです。
利用する際は、そのコストに見合うリターンが得られるのか、慎重に見極める必要があります。

2. ファクタリングは「借金」ではないが、「癖」になりやすい。
確かにファクタリングは売掛金の売買であり、借入とは異なります。
しかし、手軽に資金化できるため、安易に繰り返してしまうと、常に高いコストを支払い続ける「ファクタリング依存」に陥る危険性があります。
そうなると、いつまで経っても資金繰りは楽になりません。

3. 根本的な資金繰り改善策と並行して取り組むべし。
ファクタリングは、あくまで対症療法的な側面が強いです。
なぜ資金が不足するのか、その根本原因を突き止め、改善に取り組むことが最も重要です。
例えば、
* コスト削減の徹底
* 売上増加策の実施
* 取引条件の見直し(支払いサイトの短縮交渉など)
* 在庫管理の適正化
* 遊休資産の売却
こういった地道な努力と並行して、ファクタリングを「一時的な手段」として活用するのが賢明です。

「自分の手でつくる」ことへの愛着は、経営にも通じるものがあります。
安易な手段に頼るのではなく、自社の足腰を強くする努力を怠らないでいただきたい。
それが、資金に困った経験を持つ私からの切なる願いです。

まとめ

今回は、売掛金買取(ファクタリング)の「通知型」と「非通知型」の違いを中心に、それぞれのメリット・デメリット、そして選び方のポイントについて、現場目線で解説してきました。

最後に、重要な点を改めて整理しておきましょう。

  • 通知型(3社間)ファクタリング:
    • メリット: 手数料が比較的安い、売掛先の信用力で利用しやすい。
    • デメリット: 取引先に知られる、関係性に影響が出る可能性、手続きに時間がかかることも。
    • 向いているケース: 取引先との信頼関係が厚く、理解を得られる場合。コストを抑えたい場合。
  • 非通知型(2社間)ファクタリング:
    • メリット: 取引先に知られずに資金調達可能、スピーディー。
    • デメリット: 手数料が比較的高め、審査が厳しめになることも。
    • 向いているケース: 取引先との関係を維持したい場合。緊急で資金が必要な場合。

どちらの方式を選ぶにしても、自社の事業フェーズ、取引先との関係性、必要な資金額と時期、そして許容できるコストを総合的に比較検討することが不可欠です。

そして何より、ファクタリングは万能薬ではありません。
「緊急避難」なのか「戦略的活用」なのか、その目的を明確にし、安易な利用や依存を避けることが肝心です。
資金繰りの課題に対しては、ファクタリングという選択肢を持ちつつも、経営体質の改善という根本的な取り組みを忘れないでください。

この記事が、資金繰りに悩む経営者の皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
見えにくいリスクに備え、賢明な判断を下すための一助となることを願っています。